標準引越運送約款条文解説
標準引越運送約款第1条第1項(適用範囲)
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本頁では、標準引越運送約款第1条第1項(適用範囲)について解説しています。
標準引越運送約款第1条第1項は、標準引越運送約款が適用される範囲について規定している条項です。
標準引越運送約款第1条第1項(適用範囲)の条文
第1条(適用範囲)
1 この約款は、一般貨物自動車運送事業により行う引越運送及びこれに附帯する荷造り、不用品の処理等のサービスに適用されます。ただし、事業所等の移転又は当店が提供する定型の容器を用いて定額で行う運送であって、この約款によらない旨をあらかじめ告知した場合には、適用されません。
2 この約款に定めのない事項については、法令又は一般の慣習によります。
3 当店は、前2項の規定にかかわらず、法令に反しない範囲で、特約の申込みに応じることがあります。
標準引越運送約款第1条第1項(適用範囲)の解説
趣旨
本項は、標準引越運送約款の適用範囲を規定しています。
標準引越運送約款は、「一般貨物自動車運送事業」をおこなう引越し業者が提供する引越運送と、それに附帯する荷造り・不用品の処理等のサービスに適用されます。
ただし、事務所等の移転のように、一般的な家庭の引越しのサービスとは明らかに異なる内容のサービスが要求される場合、標準引越運送約款とサービスの実態が合わないこともあります。
このため、標準引越運送約款を使用しないことをあらかじめ告知した場合に限って、この標準引越運送約款は適用されません。なお、「誰が」告知した場合なのかは明記されていませんが、一般的に、約款の使用については事業者側が決定することが多いため、ここでは「引越し業者が」告知した場合であると思われます。
「一般貨物自動車運送事業」とは
一般貨物自動車運送事業とは、自動車(軽自動車やバイクなどの2輪の自動車以外)を使用して貨物を運送する事業のことをいいます(運送業法第2条第2項)。いわゆる、緑ナンバーの運送業のことです。
一般的な引越し業者は、この一般貨物自動車運送事業か貨物軽自動車運送業のいずれかに該当します。いわゆる「便利屋」や「なんでも屋」などのうち、一般貨物自動車運送事業や貨物軽自動車運送業の許可を取得していない業者は、本来、引越しを事業としておこなってはなりません。
なお、貨物軽自動車運送業の引越しには、この標準引越運送約款ではなく、「標準貨物軽自動車引越運送約款」が適用されます。標準引越運送約款と標準貨物軽自動車引越運送約款は、基本的な部分は同じですが、一部の内容に違いがあります。
サービス内容について
この標準引越運送約款では、「引越運送及びこれに附帯する荷造り、不用品の処理等のサービスに適用され」ることとなっています。
しかしながら、この標準引越運送約款では、「荷造り」については、ほとんど規定されていません。また、「不用品の処分」にいたっては、一切規定されていません。このため、荷造りや不用品の処分についてトラブルとなって場合は、この標準引越運送約款では対応できない可能性があります。
引越し業者のための注意点:あいまいな規定に注意
一般貨物自動車運送事業の引越し業者は、独自の約款を作成して国土交通大臣の認可を受けていない限り、この標準引越運送約款を使用しています(運送業法第10条)。
この標準引越運送約款は、国土交通省が用意しているものであるとはいえ、非常に簡単なものであり、契約書としては多くの問題点があるといわざるを得ません。
本項の規定に関連するものでも、すでに述べたとおり、荷造りのサービスや不用品の処分のサービスなど、引越し業者が当たり前のようにおこなっているサービスでさえ、ほとんど規定されていません。
このため、この標準引越運送約款をベースにして独自の約款を作成し、国土交通大臣の認可を受けることをおすすめします。または、第1条第3項を活用して、特約で荷造りのサービスや不用品の処分のサービスについて明確に規定することをおすすめします。
また、本項は、平成30年6月1日改正前では、「車両を貸し切ってする」という規定があり、いわゆる「混載便」による引越しには、適用されませんでした。
この点について、平成30年6月1日改正後では、「車両を貸し切ってする」という規定が削除され、いわゆる「混載便」による引越しにも適用されることになりました。
利用者のための注意点:あいまいな規定に注意
引越し業者を利用する場合、ほとんどの引越し業者が使用している標準引越運送約款によって、引越しサービスの契約が取り交わされます。また、本項に規定しているとおり、利用者にとっては、この標準引越運送約款は、引越し業者との契約条件の基本となるものです。
このため、標準引越運送約款は、引越し業者を利用する際には、必ず目を通しておくべきものです。
もっとも、この標準引越運送約款は非常にあいまいな内容となっていて、特にサービスの内容は、ほとんど記載されていません。このため、実際は、トラブルの予防にはあまり役に立ちません。
ただし、事故が起こった際の責任の所在などについては、非常に重要な内容となっています。これらの内容については、十分に確認しておくべきです。