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標準引越運送約款条文解説

標準引越運送約款第1条第2項(適用範囲)

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本頁では、標準引越運送約款第1条第2項(適用範囲)について解説しています。

標準引越運送約款第1条第2項は、標準引越運送約款に規定がない場合のルールについて規定している条項です。

標準引越運送約款第1条第2項(適用範囲)の条文

第1条(適用範囲)

1 この約款は、一般貨物自動車運送事業により行う引越運送及びこれに附帯する荷造り、不用品の処理等のサービスに適用されます。ただし、事業所等の移転又は当店が提供する定型の容器を用いて定額で行う運送であって、この約款によらない旨をあらかじめ告知した場合には、適用されません。

2 この約款に定めのない事項については、法令又は一般の慣習によります。

3 当店は、前2項の規定にかかわらず、法令に反しない範囲で、特約の申込みに応じることがあります。

標準引越運送約款第1条第2項(適用範囲)の解説

趣旨

本項は、標準引越運送約款に規定がない事項について、どのようなルールに従って処理するのかを規定しています。

「法令又は一般の慣習に」よる、ということは、標準引越運送約款に規定がない事項については、民法・商法などの契約の一般法や、慣習などに従って判断する、ということです。

「法令」とは

運送契約は、いわゆる「請負契約」に該当します。このため、この標準引越運送約款第1条第2項の「法令」には、民法第632条以下の規定が該当します。

ただし、商法には、「運送営業」の規定があります。つまり、本項の「法令」には、商法第569条以下の規定も該当します。

商法は、商行為(=一般的な事業者間の取引)のみに適用されます。このため、一般消費者による引越し業者の利用の場合は、この標準引越運送約款に規定がない事項については、民法第632条以下が適用されます。

他方、一般的な事業者が引越し業者を利用する場合であって、この標準引越運送約款を使用するときは、この標準引越運送約款に規定がない事項については、商法第569条以下が適用され、商法に規定がない事項については、民法第632条以下が適用されます。

一般消費者が引越しをする場合の「法令」と「慣習」の優先順位

引越しサービスについて民法に規定がない事項については、慣習に従って処理されることになります(民法第92条)。ただし、本項では、「法令又は一般の慣習」となっているため、法令と慣習は同順位であるとも解釈できます。

このため、一般消費者が引越し業者を利用する際のルールの優先順位は、「標準引越運送約款>民法≧慣習」となります。

事業者が引越しをする場合の「法令」と「慣習」の優先順位

引越しサービスについて商法に規定がない事項については、商慣習に従って処理されることになります。ただし、本項では、「法令又は一般の慣習」となっているため、法令と慣習は同順位であるとも解釈できます。

また、商慣習すらない事項については、民法に従って処理されることになります(商法第1条第2項)。そのうえで、民法にすら規定がない事項については、慣習(≠商慣習)に従って処理されることになります(民法第92条)。ただし、本項では、「法令又は一般の慣習」となっているため、法令と慣習は同順位であるとも解釈できます。

このため、一般的な事業者が引越し業者を利用する際のルールの優先順位は、「標準引越運送約款>商法≧商慣習>民法≧慣習」となります。

引越し業者のための注意点:独自の約款の作成を検討する

標準引越運送約款は非常に大雑把なものですから、意外と商法や民法などの法令が適用されることが考えられます。しかしながら、引越しのサービスが該当すると思われる商法の規定や民法の規定も、同じように内容が大雑把です。

このため、これらのルールは、引越し業者が提供している最新のサービスや、競合他社との差別化を図っているサービスについて、対応しきれていない場合があります。

以上の点から、この標準引越運送約款を使用するのではなく、会社独自の約款を作成して、国土交通大臣の認可を受けることも検討するべきです(運送業法第10条)。

利用者のための注意点:内容をよく確認する

標準引越運送約款は非常に大雑把なものですから、意外と商法や民法などの法令が適用されることが考えられます。しかしながら、引越しのサービスが該当すると思われる商法の規定や民法の規定も、同じように内容が大雑把です。

しかも、これらの法令の規定は、一般の方々にとっては理解しづらい内容となっているため、実際にトラブルになった際に、トラブルの解決のルールとしては使いづらいものといえます。

このため、引越し業者を利用する際には、トラブル防止のためにも、事故などが発生した場合の解決方法について、営業員によく説明を求めて確認しておいてください。

最終更新日2011年10月20日