現在の閲覧ページ

トップページ > 条文解説(目次) > 第2章 見積り(目次) >標準引越運送約款第3条第1項(見積り)

標準引越運送約款条文解説

標準引越運送約款第3条第1項(見積り)

スポンサード リンク

本頁では、標準引越運送約款第3条第1項(見積り)について解説しています。

標準引越運送約款第3条第1項は、引越し業者による見積りの実施について規定している条項です。

標準引越運送約款第3条第1項(見積り)の条文

第3条(見積り)

1 当店は、引越運送及びこれに附帯するサービスに要する運賃及び料金(以下「運賃等」という。)について、試算(以下「見積り」という。) を行います。

2 見積りを行ったときは、次の事項を記載した見積書を申込者に発行します。

(1)申込者の氏名又は名称、住所及び電話番号

(2)荷受人の氏名又は名称、住所及び電話番号

(3)荷物の受取日時及び引渡日

(4)発送地及び到達地の地名、地番及び連絡先電話番号

(5)運賃等の合計額、内訳及び支払方法

(6)解約手数料の額

(7)当店の名称、事業許可番号、住所、電話番号、見積り担当者の氏名及び問い合わせ窓口電話番号

(8)荷送人及び荷受人並びに当店が行う作業内容

(9)その他見積りに関し必要な事項

3 前項第5号の記載については、第3号及び第4号の事項並びに積込み、取卸し、搬出及び搬入作業、荷造り作業、開梱作業等に応じて運賃等の内容ごとに区分してわかりやすく記載します。

4 見積料は請求しません。ただし、発送地又は到達地において下見を行った場合に限り、下見に要した費用を請求することがあります。この場合には、見積りを行う前にその金額を申込者に通知し、了解を得ることとします。

5 当店は、見積りの際に内金、手付金等( 前項ただし書の規定による下見に要した費用を除く。) を請求しません。

6 当店は、見積り時に申込者に対して、この約款を提示します。

7 当店は、見積書に記載した荷物の受取日の3日前までに、申込者に対して、見積書の記載内容の変更の有無等について確認を行います。

標準引越運送約款第3条第1項(見積り)の解説

趣旨

本項は、引越し業者による見積りの実施について規定しています。

本項では、あくまで見積りをおこなうことそのものを規定しているものであり、その方法までは詳細に規定されていません。

ただし、次項以下(特に第2項)では、見積書の内容として、見積りの詳細が規定されています。

「見積り」とは

本項において、見積りとは、「引越運送及びこれに附帯するサービスに要する運賃及び料金」(=料金等)の「試算」とされています。

このため、見積りの内容としての料金等の金額が、必ずしも正式な料金等の金額となるとはいえません。

この点につき、一般的な引越しサービスの慣習として、見積りの金額は正式な料金等の金額であるといえます。

「見積り」は契約の「申込み」か?

一般的な契約は、「申込み」に対する「承諾」があることにより成立します。この点については、引越しサービス契約についても同様です。

ここで問題となる点は、引越し業者による「見積り」の提示が、引越し業者による引越しサービス契約の「申込み」に該当するかどうか、ということです。

通常の契約実務では、見積書の交付は申込みには該当しない可能性が高いといえます(東京地裁判決昭和4年6月14日等)。判例では、あくまで「申込みの誘引」と判示する傾向が強いようです。

一般的な引越しサービスの慣習として、引越し業者から提示された見積書を検討した利用者が、その引越し業者に利用の回答をすることにより契約が成立することが多いようです。

このため、一般的には、引越し業者による見積りの提示は、引越し業者による引越しサービス契約の申込みと解釈できます。

もっとも、この約款では、引越し業者の利用者を「申込者」としている点から、必ずしも引越し業者の見積書の交付が契約の「申込み」と解釈されるとは限りません。この点は、最終的には実態により判断されます。

なお、見積書の内容として、見積書の提示が引越しサービス契約の申込みとはならないことが明記されている場合は、利用者に対する「申込みの誘引」と解釈されることも考えられます。

引越し業者のための注意点:なるべく現地立ち会いの見積りを

本項により、引越し業者は、利用者に対して見積りを実施しなければなりません。

見積りの方法については、本項を含めて、特に規定されていません。このため、必ずしも現地(発送地・到達地)での見積りまでは要求されていません。

その意味では、後で見積書さえ発行していれば、電話だけの見積りやメール・インターネットによる見積りは、特にこの約款に違反するわけではありません。

もっとも、実際の引越しの作業への支障や利用者とのトラブルを考えると、現地での見積りをおこなったほうがよいということは、いうまでもありません。

利用者のための注意点:必ず現地立ち会いの見積りを

本項により、利用者は、引越し業者から見積りの提示を受けることができます。このため、少なくとも、引越し業者から料金等の試算は教えてもらうことができます。また、第2項により、見積書の発行を受けることもできます。

ただ、本項では、見積りの詳細な方法までは規定されていません。このため、引越し業者の見積りの方法は、特に規制されていません。

利用者にとって、引越し業者を利用する際の見積りは、非常に重要です。特に、引越し業者に正確な見積りを出してもらう必要があります。

その意味では、必ず現地(発送地・到達地)で引越し業者の営業員の立ち会いのもとで見積りをおこなってもわなければなりません。ところが、残念ながら、本項や他の規定でも、引越し業者に現地での立ち会いによる見積りまでは義務づけていません。

このような事情があるため、特に繁忙期では、引越し業者によっては、電話やメール・インターネットによる簡単な見積りで済ませてしまうことがあります。

電話やメール・インターネットによる見積りは、利用者と引越し業者との認識に食い違いがおこりやすく、引越し当日のトラブルの原因となります。このため、引越し業者を利用する際は、必ず現地での立ち会いの見積りを頼み、メールや電話だけの見積りを

最終更新日2011年10月20日