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標準引越運送約款条文解説

標準引越運送約款第10条第2項(荷受人が不在の場合の措置)

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本頁では、標準引越運送約款第10条第2項(荷受人が不在の場合の措置)について解説しています。

標準引越運送約款第10条第2項は、第三者である代理受取人に対する荷物の引渡しの法的効果について規定している条項です。

標準引越運送約款第10条第2項(荷受人が不在の場合の措置)の条文

第10条(荷受人が不在の場合の措置)

1 荷受人が見積書に記載した引渡日に引渡先に不在のおそれのある場合には、あらかじめ荷送人に対し、荷受人に代わって荷物を受け取る者(以下「代理受取人」という。)の氏名及び連絡先の申告を求めます。

2 荷受人が見積書に記載した引渡日に不在であった場合には、当該代理受取人に対する荷物の引渡しをもって荷受人に対する引渡しとみなします。

標準引越運送約款第10条第2項(荷受人が不在の場合の措置)の解説

趣旨

本項は、第10条第1項の受取代理人に対する荷物の引渡しが、利用者本人に対する荷物の引渡しとみなされる旨が規定されています。

本来であれば、引越し業者は、契約の当事者である利用者本人に対して荷物を引渡さなければなりません。しかしながら、利用者本人が急病や事故などのやむを得ない事情で、引渡日に立ち会うことができない場合もあります。

このような場合は、本項により、利用者が申告した受取代理人に対する引渡しをもって、利用者に対する引渡しとみなします。

みなし規定

本項はいわゆる「みなし規定」であるため、受取代理人が利用者本人でなくても、利用者本人に引渡したものとして扱います。

引越し業者のための注意点:受取代理人のリスクに注意

本項により、利用者から受取代理人の申告があった場合は、受取代理人に対して荷物を引き渡せばよいことになります。ただ、本来、法的には、受取代理人に対する荷物の引渡しは、本項の規定だけでは不十分です。

例えば、受取代理人が本当に利用者本人が申告した者なのか(受取代理人の本人確認の問題)、受取代理人が民法上の代理人としての有効な代理権を有しているのかどうか、といった手続き上の問題があります。

滅多にないこととは思いますが、うっかり本来は受取代理人ではない者に荷物を引渡してしまった場合は、引越し業者は、なんらかの責任を負うことになる可能性もあります。

この点について、厳密に手続きをおこなうのであれば、受取代理人から利用者本人の署名押印がなされた委任状を交付してもらうべきです。しかしながら、本項は、もともと緊急事態を想定した規定であり、このような緊急事態では、委任状の交付は難しいものと思われます。

このため、引渡しの責任のリスクを軽減するためにも、荷物の引渡しが完了した際に、受取代理人に確認書へのサインを求めてください。この際、単に受取代理人の氏名を書いてもらうのではなく、利用者本人の受取代理人としてサインしてもらったことがわかるように、「●● ●●(利用者本人の氏名)受取代理人○○ ○○」のようにサインしてもらってください。

利用者のための注意点:荷物の配置は期待できない

本項により、受取代理人への荷物の引渡しは、利用者本人への荷物の引渡しとなります。このため、引越し業者の作業が、本来は利用者自身が期待したような形とは違った作業となる可能性があります。

荷物の引渡しの際には、本来は、利用者の細かな指示に従って、引越し業者が荷物を搬入していきます。特に、大型の家具の配置などは、大まかな配置は当然ながら、壁からの距離や隣の家具との距離など、細かな指示が重要となります。

ところが、受取代理人に荷物を引渡しを受けてもらう場合は、これらの指示ができない可能性が高いといえます。このため、想定していた荷物の配置とはならない可能性があります。

この点について、あらかじめ受取代理人や引越し業者に荷物の配置の希望を伝えていた場合は、ある程度は希望通りの配置で荷物を搬入してもらうこともできます。この際、見取り図などに荷物の配置を記入していて受取代理人や引越し業者に渡していた場合は、より効果的です。

ただ、本項が適用されるような、急病や事故のような緊急事態では、見取り図など容易できない可能性が高いものと思われます。このため、このような緊急事態を想定して、あらかじめ見取り図などを用意して、引越し業者に渡しておくことも検討するべきです。

なお、搬入の現場に立ち会えないということは、事故があっても、直接対応ができないということでもあります。事故があった場合は、受取代理人が対応しなけばなりませんが、よほど引越しになれた受取代理人でもない限り、利用者本人よりも対応ができないものと思われます。

このような事情があるため、なるべく自分で搬入の現場に立ち会うべきです。

最終更新日2011年10月20日