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標準引越運送約款条文解説

標準引越運送約款第15条第3項(事故の際の措置)

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本頁では、標準引越運送約款第15条第3項(事故の際の措置)について解説しています。

標準引越運送約款第15条第3項は、第15条第2項に規定する荷物の滅失・毀損・大幅な遅刻があった場合における、引越し業者の緊急時等の対応について規定している条項です。

標準引越運送約款第15条第3項(事故の際の措置)の条文

第15条(事故の際の措置)

1 当店は、荷物の全部の滅失を発見したときは、遅滞なくその旨を荷送人に通知します。

2 当店は、荷物の相当部分の滅失又は全部若しくは相当部分のき損を発見したとき、又は荷物の引渡しが見積書に記載した引渡日より遅延すると判断したときは、遅滞なく荷送人に対し、相当の期間を定め荷物の処分につき指図を求めます。

3 当店は、前項の場合において、指図を待ついとまがないとき、又は当店の定めた期間内に指図がないときは、荷送人の利益のために、当店の裁量によって運送の中止又は運送経路若しくは運送方法の変更その他の適切な処分をします。

4 当店は、前項の規定による処分をしたときは、遅滞なくその旨を荷送人に通知します。

5 第2項の規定にかかわらず、当店は運送上の支障が生ずると認める場合には、荷送人の指図に応じないことがあります。

6 当店は、前項の規定により指図に応じないときは、遅滞なくその旨を荷送人に通知します。

7 当店は、荷物の一部の滅失又はき損を発見したときは、荷送人の指図を求めずに運送を続行した上で、遅滞なくその旨を荷送人に通知します。

標準引越運送約款第15条第3項(事故の際の措置)の解説

趣旨

本項は、第15条第2項に規定する荷物の滅失・毀損・大幅な遅刻があった場合において、緊急事態等が発生したときにおける引越し業者の対応を規定しています。

引越し業者は、荷物の相当部分の滅失、荷物の全部・相当部分の毀損、または大幅な遅刻があった場合(第15条第2項参照)において、次の事態が発生したときは、荷物の搬出に立ち会った利用者(=荷送人)の利益のために、自己の裁量によって、適切な処分をしなければなりません。

  1. 指図を待ついとま(時間)がないとき
  2. 当店の定めた期間(=第15条第2項の「相当の期間」)内に指図がないとき

なお、適切な処分とは、次の行為などです。

  1. 運送の中止
  2. 運送経路の変更
  3. 運送方法の変更

具体例

例えば、突然の地震で運送中に道路が寸断された場合、大幅な遅刻により、引渡日の引渡しに間に合わなくなる可能性があります。

このような場合に、利用者との連絡が取れないときは、引越し業者は、本項により、多少時間がかかるとしても、運送経路の変更ができます。

また、津波や大雨などで荷物の相当部分が流され、残った荷物も水に浸かってしまった場合、そのまま運んだとしても、利用者の利益にはならない可能性があります。

このような場合に、利用者との連絡が取れないときは、引越し業者は、本項にもとづいて、いった運送を停止したり運送を中止したりすることができます。

引越し業者のための注意点:緊急事態では臨機応変に対応を

本項により、第15条第2項に規定する荷物の滅失・毀損・大幅な遅刻があった場合であっても、荷送人からの指図を待つ時間がないときや、引越し業者自身が第15条第2項により定めた期間内に荷送人からの指図がないときは、自己の裁量により、対応することができます。

ただ、あくまで「荷送人の利益のため」ですから、引越し業者自身の利益のために対応してはなりません。

また、対応については、上記のとおり、①運送の中止、②運送経路の変更、③運送方法の変更―が規定されていますが、「その他の適切な処分」と規定されていますので、ある程度は柔軟に対応することができます。

なお、滅失事故・毀損事故の原因が利用者の責任や荷物の性質・欠陥である場合は、本項の処分について、追加料金や費用を請求できます(第20条第2項参照)。

利用者のための注意点:なるべく連絡に応じて指図を出すこと

本項により、第15条第2項に規定する荷物の滅失・毀損・大幅な遅刻があった場合であっても、荷送人からの指図を待つ時間がないときや、引越し業者が第15条第2項により定めた期間内に荷送人からの指図がないときは、引越し業者は、自己の裁量により、対応することができます。

この点について、引越し業者が荷送人からの指図を待つ時間がないときではやむを得ませんが、引越し業者が定めた期間内に指図ができるときは、指図を出すべきです。こうすることで、引越し業者による想定外の対応を未然に防ぐことができます。

また、期間が過ぎた後であっても、念のため引越し業者に連絡するべきです。この際、引越し業者がまだ対応をしていない場合は、指図を出すことも検討してください。

なお、滅失・毀損の原因が利用者の責任や荷物の性質・欠陥である場合は、本項による引越し業者の処分により、追加料金や費用が発生することもあります(第20条第2項参照)。

最終更新日2011年10月20日