現在の閲覧ページ

トップページ > 条文解説(目次) > 第8章 運賃等(目次) > 標準引越運送約款第20条第3項(事故等と運賃、料金)

標準引越運送約款条文解説

標準引越運送約款第20条第3項(事故等と運賃、料金)

スポンサード リンク

本頁では、標準引越運送約款第20条第3項(事故等と運賃、料金)について解説しています。

標準引越運送約款第20条第3項は、荷物の一部の滅失・毀損または遅刻や作業の大幅な遅れがあった場合における運賃等の支払いについて規定している条項です。

標準引越運送約款第20条第3項(事故等と運賃、料金)の条文

第20条(事故等と運賃、料金)

1 当店は、第13条第1項の規定により処分をしたときは、その処分に要する運賃、料金その他の費用を収受し、並びに当店が既に行った運送及びこれに附帯するサービスに要した運賃等を収受します。

2 当店は、第15条第2項及び第3項の規定により処分をしたときは、事故等が荷送人の責任による事由又は荷物の性質若しくは欠陥により生じた場合に限り、その処分に要する運賃、料金その他の費用を収受します。

3 当店は、荷物の一部の滅失若しくはき損又は遅延が生じた場合において申込みに係る運送を続行した場合は、運賃等の全額を収受します。

4 当店は、第15条第1項に規定する荷物の全部の滅失又は同条第2項に規定する荷物の相当部分の滅失又は全部若しくは相当部分のき損が生じた場合は、当該事故が荷送人の責任による事由又は荷物の性質若しくは欠陥により生じた場合に限り、当店が既に行った運送及びこれに附帯するサービスに要した運賃等を収受します。

5 第1項、第2項及び第4項の場合において、当店が既にその荷物について運賃等の全部又は一部を収受している場合には、第1項、第2項又は第4項の規定により当店が収受することとしている金額に充当し、余剰があるときは払い戻します。

標準引越運送約款第20条第3項(事故等と運賃、料金)の解説

趣旨

本項は、荷物の一部の滅失・毀損または遅刻や作業の大幅な遅れがあった場合における、引越し業者の運賃等の請求権について規定している条項です。

引越し業者は、荷物の一部の滅失・毀損または遅延が生じた場合において、申込みがあった見積りどおりの運送を続行したときは、その運賃等の全額を請求することができます。

引越し業者のための注意点:料金は前払いで対応する

本項により、引越し業者は、荷物の一部の滅失・毀損程度の軽微な事故や、遅刻や作業の大幅な遅れがあった場合であっても、利用者に対して、見積書に記載した料金の全額を請求することができます。

ただ、いかに約款に本項のような記載があるとはいえ、現実には、このような主張は必ずしも利用者に受け入れられるとは限りません。このため、事故の補償と料金の支払いについて、話合いになることがあります。

このようなリスクがあるため、一般的にな引越し業者は、なるべく早く利用者に料金を払ってもらい、事故が発生した場合であっても、すでに料金は支払済み、という状態にしておきます。こうすることで、利用者から「補償があるまで料金は払えない」と主張されることがなくなります。

具体的には、一般的な引越し業者は、荷物の搬出作業を始める前、遅くとも荷物の搬出作業が終わった時点で、運賃等の支払いを受けます(第19条第5項参照)。

利用者のための注意点:事故による値引きはできない

本項により、利用者は、荷物の一部の滅失・毀損程度の軽微な事故や、引越し業者による遅刻や作業の大幅な遅れがあった場合、たとえそれが補償の対象となるものであったとしても、一旦は、見積書に記載した料金の全額を支払わなければなりません。

このため、事故や遅刻や作業の大幅な遅れがあったことによる値引きは、少なくとも約款上はできないことになります(もちろん、引越し業者が値引きに応じた場合は別です。)。

この点から、補償の交渉や引越し業者からの損害賠償金の支払いは、料金の支払いの後ということになります。これは、利用者にとっては非常に不利な規定であり、逆に引越し業者にとっては非常に有利な規定であるといます。

最終更新日2011年10月20日