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標準引越運送約款条文解説

標準引越運送約款第25条第1項(責任の特別消滅事由)

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本頁では、標準引越運送約款第25条第1項(責任の特別消滅事由)について解説しています。

標準引越運送約款第25条第1項は、引越し業者の一部の荷物の滅失・毀損に対する責任の消滅について規定している条項です。

標準引越運送約款第25条第1項(責任の特別消滅事由)の条文

第25条(責任の特別消滅事由)

1 荷物の一部の滅失又はき損についての当店の責任は、荷物を引き渡した日から3月以内に通知を発しない限り消滅します。

2 前項の規定は、当店がその損害を知って荷物を引き渡した場合には、適用しません。

標準引越運送約款第25条第1項(責任の特別消滅事由)の解説

趣旨

本項は、荷物の一部の滅失・毀損についての引越し業者の責任に関する消滅期間を規定しています。

荷物の一部の滅失・毀損についての引越し業者の責任は、その荷物を引き渡した日から起算して3ヶ月以内に、利用者が引越し業者にその責任についての通知を発信しない限り、消滅します。

本項では「時効」という表現が使用されておらず、他方、第27条第1項では「時効」という表現があることから、本項は、時効についての規定ではない考えられます。このため、民法の時効の規定は、本項に適用されないものと思われます。

本項は、引越し業者を免責する特約、利用者による引越作業の検査期間、または瑕疵担保期間(通常は1年間。民法第627条参照)の短縮のいずれかと考えられます。この点について、第25条第2項の表現が、民法第640条の表現と似ているため、本項は、瑕疵担保期間の短縮である可能性が高いと思われます。

通知を発すればよい

本項は、「荷物を引き渡した日から3月以内に通知を発しない限り」となっていることから、利用者は、何らかの引越し業者の責任を追求したい場合は、とりあえず荷物の引き渡しがあった日から起算して3ヶ月以内に、引越し業者に対して通知を発信する必要があります。

この点について、「通知を発しない限り」となっているため、必ずしも引越し業者にその通知が到達している必要はありません。例えば、書面(証拠を残すためには一般書留の内容証明郵便が最も有効)で通知をした場合は、いわゆる消印有効ということになります。

消費者契約法違反?

利用者が一般消費者であった場合、引越し業者と利用者との契約には、消費者契約法が適用されます。この場合、本項は、消費者契約法第9条第1項第1号または同第3号により、無効となる可能性もあります。

もっとも、引越しの事故による荷物の滅失・毀損は、その多くが利用者の日常生活によって発生する損害(家具のキズなど)と共通する部分が多く、区別がつきません。

このため、3ヶ月経過したにもかかわらず利用者からの通知がない場合に、引越し業者の責任を免除する本項の趣旨は、一応は合理性があるため、消費者契約法違反とならない可能性もあります。

引越し業者のための注意点:ひとまず3ヶ月経過すれば安心だが…

本項により、利用者からの通知がない場合は、引越し業者の責任は、荷物の引き渡しの日から起算して3ヶ月後には、消滅します。このため、ひとまず引き渡しの日から3ヶ月経過した場合は、安心して差し支えないといえます。

ただ、すでに述べたように、一般消費者が利用者である場合、本項は消費者契約法に反し、無効である可能性も否定できないため、完全に安心できるわけではありません。また、第25条第2項により、引越し業者が荷物の一部の滅失・毀損を知っていた場合は、本項は適用されません。

利用者のための注意点:すべての荷物を点検すること

本項により、利用者が通知しない場合は、引越し業者の責任は、荷物の引き渡しの日から起算して3ヶ月後には、消滅してしまいます。このため、荷物の滅失・毀損の事故があった場合は、直ちに引越し業者に連絡するべきです。

この点について、段ボールに閉まったままの荷物や、押入れの奥に収納してしまった荷物などは、ついついそのまま忘れて3ヶ月経ってしまうことがあります。このような場合に、その荷物を後で取り出して初めて毀損していることに気がついても、後の祭りです。このため、引越しの作業が終わったら、すべての荷物を点検するべきです、

特に、季節性の荷物、例えば扇風機、ハロゲンヒーター、オイルヒーター、ストーブなどは、オフシーズンに引越しをしてしまうと、そのまま押入れに収納してしまいがちです。このため、3ヶ月以上経過して、いざ使おうとした際に、故障して動かなくなっていたとしても、本項により、引越し業者に責任を追求することが難しくなります。

これらは、家電製品であるため、引越し作業によるちょっとした振動や衝撃で故障してしまうこともあります。このため、引越しの作業が終わっても、すぐには収納せずに、必ず故障していないかどうかを確認するべきです。

最終更新日2011年10月20日