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標準引越運送約款条文解説

標準引越運送約款第27条第3項(時効)

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本頁では、標準引越運送約款第27条第3項(時効)について解説しています。

標準引越運送約款第27条第3項は、引越し業者の事故等にもとづく利用者の損害賠償請求権に関する消滅時効の短縮の特則を規定している条項です。

標準引越運送約款第27条第3項(時効)の条文

第27条(時効)

1 荷物の滅失、き損又は遅延についての当店の責任は、荷受人等が荷物を受け取った日から1年を経過したときは、時効によって消滅します。

2 前項の期間は、荷物の全部が滅失した場合においては、見積書に記載した引渡日からこれを起算します。

3 前2項の規定は、当店がその損害を知っていて荷受人等に告げなかった場合には、適用しません。

標準引越運送約款第27条第3項(時効)の解説

趣旨

本項は、第27条第1項および第27条第2項に規定する、引越し業者の事故等があった場合における、利用者の損害賠償請求権の消滅時効の短縮の特則について規定している条項です。

第27条第1項および第27条第2項の規定は、引越し業者が事故等の損害があることを知っていながら利用者に告げなかった場合には、適用されません。

このような場合は、引越し業者の事故等に対する利用者の損害賠償請求権の消滅時効の期間は、民法の原則どおり、10年となります(民法第167条第1項参照)。

引越し業者のための注意点:隠さずに通知する

本項により、荷物の滅失・毀損または遅延の事故等があることを知っていながら、これを利用者に告げなかった場合は、引越し業者は、10年間の消滅時効にかかるまで、責任を追求される可能性があります。

このため、事故等があった際には、素直に利用者に通知し、謝罪のうえ、補償交渉をおこなうべきです。

利用者のための注意点:なるべく1年以内に終了させる

本項により、荷物の滅失・毀損または遅延の事故等があることを知っていながら、これを利用者に告げなかった場合は、引き渡しの日から1年(第27条第1項参照)経過したとしても利用者の損害賠償請求権は消滅しないため、利用者は、引越し業者の責任を追求することができます。

しかしながら、引越し業者が「その損害を知っていて荷受人等に告げなかった」ことを実際に立証することは、「告げなかったこと」=通告が「存在しないこと」を立証しなければならないため、極めて困難です(もっとも、この場合は、引越し業者の側が「告げたこと」についての立証責任を負う可能性もありますが)。

このため、実際に事故があった場合は、本項の規定を過剰に期待することなく、なるべく第27条第1項の規定により、引き渡しの日から1年以内に補償交渉を終了させるか、または時効を中断させるべきです(民法第147条参照)。

本項は、あくまで引き渡しの日から1年経過してから、明らかに引越し業者が知っていたであろう事故等の責任を追求する場合など、やむを得ない状況に利用するものと考えるべきです。

最終更新日2011年10月20日