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標準引越運送約款条文解説

標準引越運送約款第6条(荷物の受取を行う日時)

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本頁では、標準引越運送約款第6条(荷物の受取を行う日時)について解説しています。

標準引越運送約款第6条は、引越し業者が荷物を受け取る日時について規定している条項です。

標準引越運送約款第6条(荷物の受取を行う日時)の条文

第6条(荷物の受取を行う日時)

当店は、見積書に記載した受取日時に荷物を受け取ります。

標準引越運送約款第6条(荷物の受取を行う日時)の解説

趣旨

本条は、引越し業者が見積書に記載した受取日時に荷物を受け取るべき旨を規定しています。極めて当然の規定です。

もっとも、現実には、交通渋滞等により、本条のとおりに引越し業者が受取日時に荷物を受取ることができないこともあります。このような場合には、遅刻などの作業の遅れによる補償が問題となることもあり得ます。

引越し業者のための注意点:遅刻はさほど気にしなくてもよい

引越し業者としては、交通渋滞等により、受取日時での荷物の受取に遅れること(いわゆる遅刻)があります。このため、必ずしも本条を守ることができるものとは限りません。

ただ、遅刻があったとしても、その事情によっては、免責されることがあります(特に不可抗力の場合。第23条参照)。

また、免責されない場合であっても、遅刻や作業の大幅な遅れによる損害賠償の範囲は、「受取遅延により直接生じた財産上の損害」であり、しかも「運賃等の合計額の範囲内」となっています(第26条第2項第1号・同第3号参照)。

現実問題としては、よほど大幅な遅刻でもない限りは、利用者に直接の財産上の損害が生じることは考えにくいと思われます。

ただし、利用者が長距離の移動(特に飛行機による移動など)をしなければならない場合に、遅刻や作業の大幅な遅れが原因で予約していたチケットが無駄になったときなどは、損害賠償の対象となる可能性があります。

また、受取日時が午後であった場合に、遅刻や作業の大幅な遅れにより交通機関が終了した後で作業が終わったときなどは、利用者は、やむを得ずホテルなどに宿泊しなければならなくなります。このような場合のホテル代なども、損害賠償の対象となる可能性があります。

このように、法的な責任という意味では、遅刻や作業の遅れは過剰に気にする必要はありませんが、当然ながら、利用者からのクレームに繋がります。このため、遅刻や作業が遅れることがわかった時点で連絡を入れるなど、利用者に対する配慮が重要となります。

利用者のための注意点:遅刻による補償は難しい

本条により、引越し業者は受取日時に当然に荷物の受取に来てくれるのかとういうと、現実には、必ずしもそうではありません。

特に、早朝からの作業の場合、いかに地元の交通事情に精通している引越し業者のドライバーとはいえ、事故や道路工事により、交通渋滞の予測が外れることがあります。このような場合は、引越し業者が遅刻することがあります。

ただ、実際に引越し業者が遅刻してきた場合であっても、その補償を求めることは、相当に困難であるといわざるを得ません。

というのも、引越し業者の遅刻や作業の大幅な遅れによる補償は、「受取遅延により直接生じた財産上の損害」が対象であり、「運賃等の合計額の範囲内」という制限までついています(第26条第2項第1号参照)。

つまり、損害は財産上のものに限られ、精神上の損害(いわゆる精神的苦痛や慰謝料)は対象外です。また、遅刻や作業の大幅な遅れにより「直接生じた」損害であるため、実際に損害が生じていない場合は、補償の対象外です。

このため、事前に予約していた交通機関の交通費が無駄になった場合や、よほど長時間の遅刻や作業の大幅な遅れで終電がなくなり、やむを得ずホテルなどに宿泊した場合など、実際に費用が発生した場合でもない限り、引越し業者から補償を受けることは難しいものと思われます。

最終更新日2011年10月20日