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標準引越運送約款条文解説

標準引越運送約款第12条第1項(引渡しができない荷物の処分)

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本頁では、標準引越運送約款第12条第1項(引渡しができない荷物の処分)について解説しています。

標準引越運送約款第12条第1項は、利用者に荷物の引渡しができない場合の引越し業者の対応について規定している条項です。

標準引越運送約款第12条第1項(引渡しができない荷物の処分)の条文

第12条(引渡しができない荷物の処分)

1 当店は、相当の期間内に前条第1項に規定する指図がないときは、荷物を倉庫営業者に寄託し又は供託し若しくは競売することがあります。

2 前項の規定による処分を行ったときは、遅滞なくその旨を荷送人又は荷受人に対して通知します。

3 第1項の規定による処分に要した費用は、荷送人の負担とします。

4 当店は、第1項の規定により競売したときは、その代価の全部又は一部を運賃等並びに指図の請求及び競売に要した費用に充当し、不足があるときは、荷送人にその支払を請求し、余剰があるときは、これを荷送人に交付し、又は供託します。

標準引越運送約款第12条第1項(引渡しができない荷物の処分)の解説

趣旨

本項は、引越し業者が引渡しができない荷物をどのように処分することができるのかを規定しています。

(明示されていませんが)第11条第1項で引越し業者が定めた相当の期間内に第11条第1項の指図がない場合、引越し業者は、本項により、次の行為をおこなうことができます。

  1. 荷物の倉庫営業者への寄託
  2. 荷物の供託
  3. 荷物の競売

1の「荷物の倉庫営業者への寄託」は、倉庫営業者=倉庫業者に対して、荷物を預けることです。当然ながら保管料が発生します。

2の「荷物の供託」は、供託所(法務大臣指定の倉庫業者)へ荷物を預けることです。こちらも保管料が発生します。

3の「荷物の競売」は、裁判所への動産競売の申立てにより競売で荷物を売却処分することです。こちらも申立ての手数料が発生します。

なお、これらの保管料や手数料は、荷物の搬出に立ち会った利用者=荷送人の負担となります(第12条第3項参照)。

引越し業者のための注意点:費用倒れに注意

本項により、引越し業者としては、荷物を受け取ったまま何もできなくなる、という最悪の事態だけは避けることができます。しかしながら、実際に本項にもとづいて対応することになった場合は、難しい判断が求められます。

まず、倉庫営業者への寄託や供託は、保管料が発生します。その保管料は、最終的には荷送人に請求することができます(第12条第3項参照)が、荷送人に請求するまでは、引越し業者が建て替えることになります。その結果、保管料が回収できない場合は、費用倒れとなる可能性があります。

このため、荷送人から必ずしも保管料を回収できるかどうかわからない状態では、安易に寄託や供託はできません。

かといって、動産競売を申し立てた場合は、よほど高額な荷物を所有している利用者でない限り、費用倒れとなる可能性もあります(そもそも、そのような利用者が音信不通になったり、受取拒否をしたりすることは滅多にないものと思われます)。

また、安易に競売を申し立てた場合は、いかに正当な権利による正式な手続きとはいえ、後の利用者からのクレームの原因となるリスクもあります。

利用者のための注意点:荷物は必ず受け取る

本項により、利用者が荷物を受け取ることができない場合(第11条第1項参照)は、引越し業者は、荷物を倉庫業者や供託所(法務大臣指定の倉庫業者)に預けたり、競売で勝手に売ったりすることができます。

この場合、倉庫業者や供託所(法務大臣指定の倉庫業者)に支払う保管料は、利用者(=荷送人)の負担となります(第12条第3項参照)。この費用は、荷物の量、保管日数、移動距離、倉庫への搬出・搬入の手間にもよりますが、意外に高くつく可能性もあります。

また、引越し業者に競売を申し立てられてしまった場合は、荷物は手元に返ってこないことになります。

このため、引越し業者から荷物を受け取ることができないような状態にはならないようにするべきです。

最終更新日2011年10月20日