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標準引越運送約款条文解説

標準引越運送約款第17条(事故証明書の発行)

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本頁では、標準引越運送約款第17条(事故証明書の発行)について解説しています。

標準引越運送約款第17条は、引越し業者からの事故証明書の発行について規定している条項です。

標準引越運送約款第17条(事故証明書の発行)の条文

第17条(事故証明書の発行)

当店は、荷物の滅失、き損又は遅延に関し、証明の請求があったときは、荷物を引き渡した日(滅失のときは見積書に記載した引渡日)から1年以内に限り、事故証明書を発行します。

標準引越運送約款第17条(事故証明書の発行)の解説

趣旨

本項は、事故が起こった際の、引越し業者による事故証明書の発行義務を規定しています。

利用者からの請求があった場合、引越し業者は、利用者に対し、実際に荷物の引渡しがあった日(荷物の滅失の場合は見積書記載の引渡日)から起算して1年以内に限り、荷物の滅失・毀損または遅延(遅刻や作業の大幅な遅れ)などに関する証明書を発行しなければなりません。

事故証明書とは

本項の「事故証明書」については、その定義が規定されていないため、必ずしもその意義は明らかではありません。一般的には、運送保険の保険金の請求の際に保険会社に提出する書類の一種であると思われます。

つまり、引越し業者の利用者が自ら独自に運送保険に加入した場合において、事故が発生したときに、保険金の請求のために、引越し業者に対して請求する書類であるものと思われます。

引越し業者のための注意点:事故証明書は責任を明らかにしてから

引越し業者としては、本項により、事故証明書の発行を拒否することはできません。このため、利用者からの請求があった場合は、応じる必要があります。

ただ、事故証明書を発行するということは、責任の所在はともかくとして、「事故があった」ということを認めることになります。このため、「荷物の滅失、き損又は遅延」があるかどうかがはっきりしないうちは、事故証明書の発行には慎重にならなければなりません。

通常、事故等が発生した場合、利用者との間で、事故等があったかどうか(いわば事実認定)を確認したうえで、それが損害賠償(補償)の対象となるのかどうかの話合いをおこないます。

この点について、まだ話合いの結果が出ていない段階で事故証明書を発行してしまうと、少なくとも事故等があったことを認めることになり、場合によってはその責任までも認めることになります。これでは、本当は引越しサービスが原因でない事故等(もともと建物や荷物にキズがついていた場合など)についても、事故があったものと認めることになりかねません。

このため、引越し業者としては、責任の所在を明らかにし、損害賠償の対象となるのか、または免責となるのかの結論が出た後で、事故証明書を発行するべきです。

なお、現実的には、事故証明書は、運送保険を別途で独自にかけていた利用者からの請求により、免責対象となっている事故等(第23条第24条第1項第24条第2項参照)について、発行することになります。つまり、引越し業者が補償しない事故等について、保険会社から保険金が下りる場合に発行することになります。

利用者のための注意点:ほどんど縁がない規定

事故証明書は、運送会社に保険金を請求する際の手続きに必要となる書類です。このため、本項は、引越しサービスについて、利用者が独自で保険会社に運送保険をかけていた場合に重要となる規定です。

一般家庭における引越しでは、別途でわざわざ保険料を支払って運送保険をかけることは、滅多にありません。このため、本項は、よほど高額な家財道具があるため、運送保険をかける必要がある富裕層でもない限り、縁がない規定です。

また、現実に事故が発生した場合であっても、よほど悪質な引越し業者でない限り、話合いによって補償が決まります。

このため、実際に事故証明書が必要となるのは、利用者が運送保険をかけていた場合において、発生した事故等が引越し業者の補償対象とならないもの(第23条第24条第1項第24条第2項参照)であり、かつその事故が運送保険の保証対象であときです。

なお、実際の事故証明書は、現場の作業員が発行するものではなく、少なくとも支店の担当者か、場合によっては本社が発行するものです。一般的な引越し業者では、現場の作業員には、事故証明書のような重要書類を発行する権限が与えられていません。

最終更新日2011年10月20日