標準引越運送約款第29条(荷送人又は荷受人等の賠償責任)

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標準引越運送約款条文解説

標準引越運送約款第29条(荷送人又は荷受人等の賠償責任)

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本頁では、標準引越運送約款第29条(荷送人又は荷受人等の賠償責任)について解説しています。

標準引越運送約款第29条は、利用者の引越し業者に対する責任について規定している条項です。

標準引越運送約款第29条(荷送人又は荷受人等の賠償責任)の条文

第29条(荷送人又は荷受人等の賠償責任)

荷送人又は荷受人等は、自らの故意若しくは過失により、又は荷物の性質若しくは欠陥により当店に与えた損害について、損害賠償の責任を負わなければなりません。ただし、荷送人又は荷受人等が過失なくしてその性質若しくは欠陥を知らなかったとき、又は当店がこれを知っていたときは、この限りでありません。

標準引越運送約款第29条(荷送人又は荷受人等の賠償責任)の解説

趣旨

本項は、荷物の搬出に立ち会った利用者(=荷送人)、荷物の搬入に立ち会った利用者やその代理人(=荷受人等)の引越し業者に対する損害賠償責任について規定しています。

利用者は、故意・過失または荷物の性質・欠陥により引越し業者に対して与えた損害について、損害賠償の責任を負わなければなりません。これは、一般的な民法上の不法行為(民法第709条参照)に加えて、荷物の性質・欠陥についても利用者に対して責任を課した形になります。

ただし、この損害賠償の原因となる荷物の性質・欠陥について、利用者が過失なく知らなかったとき、または、引越し業者がこの性質・欠陥について知っていたときは、利用者は、その損害賠償責任を負う必要はありません。

引越し業者のための注意点:荷物の性質に注意

故意または過失により損害賠償の責任を負うのは、民法上当然のことです(民法第709条)。このため、本項の本文の前半は、特に法的にはあえて規定するほどのものではありません。

むしろ、本項は、本文の後半とただし書きに規定している、荷物の性質・欠陥による損害が重要であるといえます。特に、荷物の性質に関する規定は本項以外に数多くあり、しかも引越し業者の責任に関係する規定もあります(第4条第2項第4号・第8条第1項第24条第2項参照)。

このように、本条の他に荷物の性質による損害賠償の規定があり、条文が競合しているます。このため、状況によっては、荷物の性質による損害は、必ずしも利用者が引越し業者に賠償することにならず、逆に引越し業者が利用者に対して賠償することにもなりかねません。

例えば、事故が起こりやすい荷物あったにもかかわらず、引越し業者が第8条第1項の申告を求めなかった場合、引越し業者が過失によりその存在を知らなかったことになります(第24条第2項参照)。このような場合、その荷物の性質により事故が起こった場合は、むしろ引越し業者が利用者に対して責任を負わなければならなくなります(第24条第2項参照)。

このように、たとえ荷物の性質によって引越し業者に損害が生じた場合であっても、一概にその責任が利用者だけに発生するとは限りません。このため、荷物の性質の確認は非常に重要です。

利用者のための注意点:事故の原因となる荷物は梱包しない

故意または過失により損害賠償の責任を負うのは、民法上当然のことです(民法第709条)。このため、故意または過失による損害賠償の責任については、免れることができません。

また、本項の本文の後半とただし書きに規定している、荷物の性質・欠陥による損害についても、利用者は、原則として責任を負うことになります。

例外として、引越し業者が責任を負う場合(第24条第2項参照)もないわけではありませんが、引越し業者が通常の注意を払って荷物を確認している場合(第8条第1項参照)は、まず引越し業者の責任なることはありません。

このため、引越し業者に損害を与えるような荷物を梱包するべきではありません。

最終更新日2011年10月20日