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標準引越運送約款条文解説

標準引越運送約款第4条第2項(引受拒絶)

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本頁では、標準引越運送約款第4条第2項(引受拒絶)について解説しています。

標準引越運送約款第4条第2項は、引越し業者による個別の荷物の引受の拒絶について規定している条項です。

標準引越運送約款第4条第2項(引受拒絶)の条文

第4条(引受拒絶)

1 当店は、次の各号の一に該当する場合には、引越運送の引受けを拒絶することがあります。

(1)運送の申込みがこの約款によらないものであるとき。

(2)運送に適する設備がないとき。

(3)運送に関し申込者から特別の負担を求められたとき。

(4)運送が法令の規定又は公の秩序若しくは善良の風俗に反するものであるとき。

(5)天災その他やむを得ない事由があるとき。

2 荷物が次に掲げるものであるときは、当該荷物に限り引越運送の引受けを拒絶することがあります。

(1)現金、有価証券、宝石貴金属、預金通帳、キャシュカード、印鑑等荷送人において携帯することのできる貴重品

(2)火薬類その他の危険品、不潔な物品等他の荷物に損害を及ぼす恐れのあるもの

(3)動植物、ピアノ、美術品、骨董品等運送に当たって特殊な管理を要するため、他の荷物と同時に運送することに適さないもの

(4)申込者が第8条第1項の規定によるその種類及び性質の申告をせず、又は同条第2項の規定による点検の同意を与えないもの

標準引越運送約款第4条第2項(引受拒絶)の解説

趣旨

本項は、引越業者が拒絶できる特殊な荷物について規定しています。

引越し業者は、本項各号の荷物については、運搬を断ることがあります。

本項にもとづく拒絶が、すでに契約が成立した場合のものか、またはまだ契約が成立していない場合のものかは、必ずしも明らかではありません。

ただ、第4号が作業中に荷物の確認ができる第8条第1項の規定にもとづいていることから、本項にもとづく荷物の運搬の拒絶は、契約の成立の前後を問わないものと思われます。

第1号について

第1号(現金、有価証券、宝石貴金属、預金通帳、キャシュカード、印鑑等荷送人において携帯することのできる貴重品)は、いわゆる「貴重品」のことです。

「等」の規定があることから、具体的に規定されているもの以外の貴重品であっても、荷送人=利用者が携帯することができるものは、本号に該当します。

このため、クレジットカード、デビットカード、ゴルフ会員権、手形、小切手、各種保険の約款、契約書、不動産の登記済証、各種鍵、高級時計なども、本号に該当する可能性があります。また、場合によっては、一部のブランド品なども本号に該当する可能性があります。

なお、「荷送人において携帯することのできる貴重品」となっていますので、携帯できない貴重品については、引越し業者に運んでもらうことができる可能性もあります。

ただし、この場合であっても、本項の他の号(特に第3号)に該当する場合は、運んでもらえません。

第2号について

第2号(火薬類その他の危険品、不潔な物品等他の荷物に損害を及ぼす恐れのあるもの)は、いわゆる「危険物」や不衛生な物のことです。

火薬類が具体的に規定されていますが、ガソリン、軽油、灯油、高純度のアルコール、劇物、毒物、一部の薬品、放射性物質、ガスボンベ、酸素ボンベ、消化器なども本号に該当します。また、汚水、汚物、生ゴミなども本号に該当します。

なお、調味油などの引火性が低い調味油については、本号に該当しないものと思われます。ただし、あまりに大量の調味油の場合は、本号に該当する可能性もあります。これは、殺虫剤などのスプレー缶やカセットコンロについても、同様です。

ちなみに、危険物については、引越し業者が運んでいる途中に発見した場合は、引越し業者は、利用者の費用負担で、荷物の取卸しなどの処分ができます(第16条第1項第16条第2項参照)。

第3号について

第3号(動植物、ピアノ、美術品、骨董品等運送に当たって特殊な管理を要するため、他の荷物と同時に運送することに適さないもの)は、一般家庭の荷物とは異なる管理を要する物のことです。

一般家庭の場合は、特に観葉植物やペットなどの動植物が該当する可能性が高いといえます。

この点について、観葉植物については、引越し業者によっては、運んでいる場合があります。ただ、この場合、観葉植物が損壊したとしても、引越し業者が免責されることを条件に、引き受けていることが多いようです(第23条第24条第1項参照)。

第4号について

第4号(申込者が第8条第1項の規定によるその種類及び性質の申告をせず、又は同条第2項の規定による点検の同意を与えないもの)は、次の荷物のことです。

  1. 「運送上特段の注意を要するものの有無並びにその種類及び性質」について利用者が申告しないもの第8条第1項参照)
  2. これらの種類および性質の点検について、利用者が同意を与えないもの(第8条条第2項

これは、一般的な引越しにおいて運ぶべきでない荷物について、引越し業者が利用者に申告を求めた場合や、ダンボールの中身などの確認への同意求めた場合に、その申告や同意を拒否した荷物のことです。

例えば、ダンボールの中に貴重品など梱包されている状況では、引越し業者は、確認のしようがありません。このため、このような梱包された貴重品などがないかどうかを利用者に申告してもらい、場合によっては梱包を解いて確認する必要があります。

ところが、利用者がこの申告をしなかった場合や、利用者が梱包を解いて確認することを拒否した場合などは、引越し業者も、対抗措置として、このような荷物の運送を拒否することができます。

引越し業者のための注意点:事故時に免責になるかどうかが重要

本項各号の荷物は、事故が発生する可能性が高く、また、事故の損害も多額になることが多いといえます。このため、引越し業者としては、本号各号の荷物を取扱うべきではありません。

本項により、引越し業者は、正当な権利として、本項各号の荷物の運搬を拒否できますので、実際に現場でこのような荷物を見かけた場合は、堂々と運搬を拒否するべきです。

なお、うっかり本項各号の荷物を運んでしまった場合において、事故が発生したときは、免責の対象とならない可能性がありますので、注意を要します(第24条第1項第24条第2項参照)。

利用者のための注意点:貴重品は自分で運ぶ

ほとんどの引越し業者は、本項各号に規定する荷物(観葉植物を除く)の運搬を拒否しています。このため、本項各号に該当する荷物については、別途専門の業者に依頼することも検討しなければなりません。

なお、第4号により、貴重品などを段ボールに梱包した場合は、その旨を引越し業者に申告しないと、紛失などの事故があっても、引越し業者からの補償を受けることができない可能性があります。このため、貴重品については、自分で運ぶようにするべきです。

また、特に、灯油などは、ストーブに入れたままうっかりと梱包してしまいがちです。これは、場合によっては火災の原因ともなりますから、しっかりとストーブから抜いてガソリンスタンドなどで処分してもらったり、使いきって空焚きをしたりするなどして、対処してください。この際、念のため、ストーブの着火に使う電池も抜いておくべきです。

最終更新日2011年10月20日