標準引越運送約款条文解説
標準引越運送約款第8条第4項(荷物の種類及び性質の確認)
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本頁では、標準引越運送約款第8条第4項(荷物の種類及び性質の確認)について解説しています。
標準引越運送約款第8条第4項は、第8条第2項の荷物の点検の費用負担について規定している条項です。
標準引越運送約款第8条第4項(荷物の種類及び性質の確認)の条文
第8条(荷物の種類及び性質の確認)
1 当店は、荷物を受け取る時に、第4条第2項各号に掲げる荷物、貴重品(第4条第2項第1号及び第3号に掲げるものを除く。)、壊れやすいもの(パソコン等の電子機器を含む。第24条第2項において同じ。)、変質若しくは腐敗しやすいもの等運送上特段の注意を要するものの有無並びにその種類及び性質を申告することを荷送人に求めます。
2 当店は、前項の場合において、その種類及び性質につき荷送人が告げたことに疑いがあるときは、荷送人の同意を得て、その立会いの上で、これを点検することができます。
3 当店は、前項の規定により点検した場合において、荷物の種類及び性質が荷送人の申告したところと異ならないときは、このために生じた損害を賠償します。
4 第2項の規定により点検した場合において、荷物の種類及び性質が荷送人の申告と異なるときは、点検に要した費用は荷送人の負担とします。
標準引越運送約款第8条第4項(荷物の種類及び性質の確認)の解説
趣旨
本項は、第8条第2項の点検にもとづく利用者の費用負担について規定してます。
第8条第2項の点検の結果、その荷物の種類・性質が利用者の申告(第8条第1項参照)と異った場合、利用者は、点検に要した費用を負担することになります。
具体例
本項は、例えば、梱包された絵画などがあった場合に、その絵画を点検するような状況が該当します。
引越しの荷物の中に、明らかに絵画とわかるように梱包された荷物があった場合、一般的な引越し業者は、利用者に対し、その内容の申告を求め、場合によっては点検も求めます。
この際、利用者が「趣味で自分が描いた絵だから、そのまま運んで欲しい」と申告したとしても、状況(例えば富裕層の利用者の場合など)によっては、引越し業者の作業員としては、中身の絵画を点検せざるを得ません。
このような場合、実際に梱包を解いたところ、実際は有名な画家の高額な絵画であってときは、本項により、利用者は、点検に要した費用を賠償しなければなりません。
例えば、絵画を再度梱包する費用は、利用者の負担となります。このため、利用者が引越し業者に再度梱包を依頼する場合は、追加料金を負担しなければなりませんし、専門の業者に梱包を依頼する場合は、利用者自身がその費用を負担することになります。
なお、例えば、梱包を解いた際に絵画の額縁にキズをつけてしまった場合などのように、費用ではなく損害が発生した場合は、過失の度合いによっては、引越し業者がその損害を負担しなければならなくなる可能性もあります。
引越し業者のための注意点:点検は慎重に
引越し業者としては、現場の状況によっては、第8条第2項の点検をしなければならない場合もあります。
本項により、利用者による申告と荷物が異なる場合は、その点検に要した費用は、利用者の負担となります。ただ、本項は、あくまで「費用」としか規定されておらず、「損害」とは規定されていません。
このため、点検により損害が発生した場合、点検の際の過失の度合いによっては、引越し業者に損害の賠償責任が発生する可能性もあります。このため、点検は慎重におこなわなければなりません。
このような事情があるため、荷物を点検せずに、虚偽の申告の場合は免責されるように利用者と交渉したうえで、(なるべく確認書にその旨をサインしてもらってから)荷物を運ぶことも検討するべきです。
なお、明らかに怪しい荷物であるにもかかわらず、本条の損害賠償を避けるために第8条第2項の点検をおこなわなかった場合は、その荷物について事故があったときは、その事故の損害を賠償しなければならない可能性があります(第8条第2項参照)。
このため、怪しい荷物については、慎重に点検をするか、またはあらかじめ利用者に免責してもらったうえで運ぶようにしてください。
利用者のための注意点:虚偽の申告はしない
本項により、荷物の種類・性質について虚偽の申告(第8条第1項参照)をした場合は、利用者は、点検に要した費用を負担しなければなりません。場合によっては、引越し業者から追加の料金を請求されてしまうこともあります。
このため、荷物の種類・性質については、虚偽の申告をするべきではありません。
なお、虚偽の申告をした場合であっても、事故が発生したときは、ほとんどの場合は、引越し業者が免責されることにあります(第24条第1項・第24条第2項参照)。
虚偽の申告をするメリットは何もありませんので、荷物の種類・性質については、正直に(「わからない」「覚えていない」ということも含めて)申告してください。