標準引越運送約款条文解説

本頁では、標準引越運送約款第8条第2項（荷物の種類及び性質の確認）について解説しています。

標準引越運送約款第8条第2項は、引越し業者による荷物の確認の権利について規定している条項です。

標準引越運送約款第8条第2項（荷物の種類及び性質の確認）の解説

趣旨

本項は、第8条第1項による利用者からの荷物の種類・性質の申告に虚偽の疑いがある場合における、引越し業者の荷物の点検の権利を規定しています。

引越し業者は、第8条第1項の利用者からの荷物の種類・性質の申告の際、その申告に虚偽の疑いがある場合は、利用者からの同意を得て、その荷物の点検をおこなうことができます。

本項の文末が「できます。」となっているため、本項は引越し業者の権利であることは明らかです。ただし、「荷送人の同意を得て」とあるため、引越し業者が単独で強制的に荷物を点検できるわけではありません。

もっとも、利用者が本項の点検を拒否した場合は、その荷物は第4条第2項第4号に該当し、引越し業者は、荷物の運搬を拒否できます。

なお、本項による点検の損害賠償や費用負担については、点検の結果に応じて、第8条第3項または第8条第4項に規定されています。

具体例

例えば、明らかにガソリンや灯油の臭いする段ボールなどがあった場合は、本項に該当します。また、段ボールから液漏れしている場合や、動物の鳴き声がする場合なども該当します。

このような場合、本項により、引越し業者は、利用者に対して、その段ボールを開けて、内容を点検するように求めることができます。

引越し業者のための注意点：怪しい荷物は点検する

引越し業者としては、怪しい荷物があった場合、本項により荷物を点検するべきです。

本項による点検をおこなわなかった場合、第4条第2項各号については、第24条第2項の「過失」が認定され、その点検しなかった荷物に事故があったときは、引越し業者は、免責されない可能性があります。

なお、利用者が本項の点検を拒否したにもかかわらず、引越し業者がその荷物を運んでしまった場合は、第24条第1項の「当店がその旨を知って引き受けた場合」に該当します。

このため、このような点検を拒否された荷物に事故が発生したときであっても、免責の対象とならず、損害を賠償しなければならなくなる可能性があります。

このような損害の賠償を避けるためには、点検を拒否された荷物については、事故が発生したとしても、免責されるように利用者から同意を求めた上で運ぶべきです。または、すでに述べたように、運搬を拒否するべきです（第4条第2項第4号参照）。

ちなみに、怪しい荷物が危険物であると知らずに運び、運んでいる途中に危険物であると判明した場合は、利用者の費用負担で、荷物の取卸しなどの処分ができます（第16条第1項・第16条第2項参照）。

利用者のための注意点：点検には素直に応じる

利用者としては、引越し業者から点検を求められた場合は、素直に応じて荷物を点検してもらうべきです。

本項により引越し業者が荷物の点検を求めるということは、引越し業者が事故の危険性を感じているためです。このため、安全に荷物を運ぶためにも、むしろ積極的に点検に応じてください。

なお、どうしても点検を応じたくない場合は、無理に点検に応じる必要はありません。ただし、この場合は、引越し業者から運搬を断られる可能性があります（第4条第2項第4号参照）。

なお、引越し業者によっては、事故が発生しても損害の賠償を求めないことを条件に、点検を拒否した荷物を運んでくれる場合もあります。

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