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標準引越運送約款条文解説

標準引越運送約款第15条第7項(事故の際の措置)

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本頁では、標準引越運送約款第15条第7項(事故の際の措置)について解説しています。

標準引越運送約款第15条第7項は、荷物の一部の滅失・毀損の発生時における引越し業者の対応と利用者に対する通知義務について規定している条項です。

標準引越運送約款第15条第7項(事故の際の措置)の条文

第15条(事故の際の措置)

1 当店は、荷物の全部の滅失を発見したときは、遅滞なくその旨を荷送人に通知します。

2 当店は、荷物の相当部分の滅失又は全部若しくは相当部分のき損を発見したとき、又は荷物の引渡しが見積書に記載した引渡日より遅延すると判断したときは、遅滞なく荷送人に対し、相当の期間を定め荷物の処分につき指図を求めます。

3 当店は、前項の場合において、指図を待ついとまがないとき、又は当店の定めた期間内に指図がないときは、荷送人の利益のために、当店の裁量によって運送の中止又は運送経路若しくは運送方法の変更その他の適切な処分をします。

4 当店は、前項の規定による処分をしたときは、遅滞なくその旨を荷送人に通知します。

5 第2項の規定にかかわらず、当店は運送上の支障が生ずると認める場合には、荷送人の指図に応じないことがあります。

6 当店は、前項の規定により指図に応じないときは、遅滞なくその旨を荷送人に通知します。

7 当店は、荷物の一部の滅失又はき損を発見したときは、荷送人の指図を求めずに運送を続行した上で、遅滞なくその旨を荷送人に通知します。

標準引越運送約款第15条第7項(事故の際の措置)の解説

趣旨

本項は、荷物の一部が滅失し、または毀損したときの、引越し業者の対応と、荷物の搬出に立ち会った利用者(=荷送人)に対する引越し業者の通知義務を規定しています。

引越し業者は、荷物の一部の滅失・毀損を発見したときは、、荷送人の指図を求めずに運送を続行したうえで、その旨を荷送人に通知しなければなりません。

本項は、例えば、トラックの荷台から一部の荷物が盗まれたことや、荷物の積み替え中に落下事故によって段ボールの中身が破損したことなどを引越し業者が発見したときが該当します。

遅滞なくとは

本項における「遅滞なく」とは、正当な理由がある場合に限り、多少の遅れが許されるものの、そうでない場合はすぐに、という意味です。

このため、引越し業者は、荷物の一部について、滅失・毀損を発見した場合は、何らかのやむを得ない事情によって通知することができないときを除いて、すぐに荷送人に対して、荷物の滅失・毀損があった旨を通知しなければなりません。

あくまで「一部の滅失又はき損」

本項は、「一部の滅失又はき損」となっていますので、全部の滅失、相当部分の滅失・全部または相当部分の毀損については適用されません。

全部の滅失については第15条第1項、相当部分の滅失・全部または相当部分の毀損については第15条第2項、にそれぞれ規定されています。

引越し業者のための注意点:運送しつつ通知をする

本項により、引越し業者は、荷物の一部の滅失や毀損を発見した場合は、荷送人に通知しなければなりません。ただし、運送そのものは、荷送人の指図を受けることなく続けても差し支えありません。

本項が適用されるような「荷物の一部の滅失」という事態は、よほどいい加減な荷物の管理をしていない限り、まず滅多にあることではありません。また、荷物の一部の毀損は、比較的あり得る事故ではあります。いずれにせよ、利用者にとっては問題となる事態ですので、すぐに通知するべきです。

なお、荷物の全部の滅失があった場合については荷送人対して通知しなければなりません(第15条第1項参照)し、一部の滅失があった場合についても荷送人に対して遅滞なく通知しなければなりません(第15条第7項参照)。

このように、荷物の滅失・毀損があった場合は、その程度に関係なく、約款上は荷送人に通知しなければなりません。このため、荷物の滅失・毀損事故があった場合は、まずは荷送人に通知するようにしましょう。

なお、荷物の一部の滅失・毀損があった場合は、その責任が引越し業者と利用者のどちらにあったとしても、引越し業者は、料金の支払いを受けることができます(第20条第3項参照)。

また、免責事項(第23条参照)に該当するときは、荷物の一部の滅失・毀損は、損害賠償の対象とはなりません。その他の場合は、損害賠償の対象となることがあります。

利用者のための注意点:指図はできない

荷物の一部の滅失や毀損を発見した場合、本項により、引越し業者は、通知こそしてくれますが、運送そのものは荷送人の指図を求めることなくおこないます。このため、荷送人としては、ひとまず引越し業者が荷物の搬入先に到着するまで待たなければなりません。

この点は、荷送人が指図をできる、荷物の相当部分の滅失や、荷物の全部・相当部分の毀損の場合とは別です(第15条第2項参照)。

なお、これらの滅失や毀損については、引越し業者の免責事項(第23条参照)に該当するときは、補償の対象とはなりません。その他の場合は、補償の対象となることがあります。

最終更新日2011年10月20日